独創と革新が芸術を生む

来月の美容外科学会総会で私は下顎骨のVライン形成の発表をしますが、この手術のネックは、下顎骨の中を通る神経・血管束を傷つけないために切除量に制限が生じる事です。また術中に骨の神経孔から出たオトガイ神経が剥き出しになり外力で多少なりともダメージを受けます。末梢神経ですから多くはほぼ回復すると分かっていても、多くの美容外科医師はこのような手術をリスクが高いと思っているようで好みません。
しかし私は整形外科医として骨は削ったり切ったりするだけでなく金属で留めて動かす、体重を掛けさせるという事をやってきましたので、殊更リスキーな手術とは思っていません。だから下顎骨の骨切りはアゴもエラもよく行います。ただ最近は手術中に骨を削りつつ下顎骨の中の下歯槽神経管が露出してきたら削るリミットが来たと思い込んできた事に疑問を感じています。
整形外科では肘部管症候群に対して神経移行術という治療があります。要は神経を骨から外して尺側から橈側に移動させるのですが、私も複数回執刀経験があり決して難しい手術ではありません。ここから下歯槽神経管を開窓して神経・血管束を少々上方へ神経テープを通して引っ張れば、あと2~3㎜更に骨が削れるのではないか。と思っています。この神経管からは歯に行く神経が枝別れしていますので、グンと上に持ち上げるのは無理にしても、今まで我々が躊躇って患者さんの期待に十分応えられなかったのが可能になるのではないか。と思っています。
こんな話を同業医師に言えば危険極まりない手術と非難されそうですが、それは従来型のBone Saw(電動ノコギリ)・Round Bur(回転ヤスリ)・平ノミを使った場合で、私は超音波骨メスを使えば何とか愛護的にそれが成し遂げられるのではないかと思っています。超音波骨メスはギブスカッタ―同様に硬いものは削るのに柔らかいものには優しいのです。