眼窩下神経孔の位置

眼窩下神経孔 眼窩下神経孔の位置は矢印の先に示したところで顔面で言えば頬のやや内側です。ですから局所麻酔液を注入する際も患者さんに必ず「頬の内側に鼻に行く神経のツボがありますので、そこに麻酔を注射します。」と話しています。この話し無しで、いきなり注射したら鼻の手術なのに別のところに注射でビックリするでしょう。
 なお鼻と違って頬は肉が柔らかいですから、注射もさほど痛くありません。この眼窩下神経への麻酔(眼窩下神経ブロック)無しに、いきなり鼻に麻酔を打てば激痛に近いものがあります。
眼窩下神経の出口付近に局所麻酔液が注入されると眼窩下神経に薬液が浸潤して、次第に鼻の下から上唇にかけて痺れてきます。この後、例えば小鼻縮小で追加の麻酔液の注射をしても全く痛くないものです。つまり鼻に行く神経の根元レベルで神経の枝そのものに麻酔して、その先の神経支配領域の感覚を無くすので、これを「ブロック注射」と呼びます。この場合は「眼窩下神経ブロック」と称します。またこういう麻酔の方法を「伝達麻酔」とも表現します。
 さて、小鼻縮小の際、この眼窩下神経ブロックで痛覚が無くなっているなら、小鼻の付け根自体に追加で局所麻酔を打たなくても良いじゃないかとの発想はでそうですが、美容外科で使う麻酔液は通常血管収縮剤入りの麻酔液で、これを小鼻の付け根に注射することで手術中の出血を抑えるのです。また万一、眼窩下神経ブロックの効きが悪かった時、局所麻酔を追加で打っておけば、痛みに関して全く安心して手術ができるのです。
眼窩下神経ブロックとは総じて言えば、痛くなくて安全な麻酔方法です。鼻の手術でこれを使わない手は無いと言えます。これをせずして静脈麻酔をやるのは医療として上手くなく、これをして静脈麻酔もやるというのは過剰な麻酔と私は思っています。静脈麻酔薬は使い過ぎると呼吸抑制を生じマイケルジャクソンのように死亡することだってありますから、不用意にやるものではないと思います。