聖闘士星矢の車田正美 ①

車田 1 漫画の連載がニュースに乗るなんて車田さんは何とビックになったんだろうと今更ながら思います。

私がこの人の出世作のボクシング漫画「リングにかけろ」を週刊少年ジャンプで毎週読み始めたのは昭和54年の6月からでしたが(注)、『まともなストーリーと上手い絵の2本立での両方がなくても面白い漫画になるんだ・・・。』と妙な感心をしたものです。

『荒唐無稽で読み手を驚かせるのを主眼とするストーリーで、絵は下手でも自信のある構図ばかり何度も描いたり、背景は抽象的にしたり、大ゴマにして下手さのアラが出ない様にする。・・・こんなことじゃ何年も続かないだろう。』とは思いつつも実際面白かったですから毎週読んでいました。

そして同年の秋の黄金の日本Jr.編の VSドイツ戦では、物理学の法則で解析する緊張感のある描写や、2頁見開きで「ギャラクティカマグナム!!」のパンチを受けた相手が何メートルも吹っ飛んで、試合会場の代々木国立競技場の窓を破って外に飛び出す等という有り得ない場面も多かったのですが、圧倒的な迫力で読者を引き込んでいたのです。後で知りましたが、この昭和54年の週刊少年ジャンプの読者アンケート1位がこの「リングにかけろ」となったのでした。

石ノ森章太郎が自著「マンガ家入門」で『小説は活字を読んでもらって場面を想像してもらうものだが、漫画は画面から入ってもらうので、また違うもの。だから面白い小説を漫画にすれば良いかというと、そうでもない。』この様な行があったはずです。

視覚に訴える表現方法としての漫画。私は高校を卒業した後は、週刊少年誌のジャンプ、マガジン、サンデーの中の何本かを毎週読んでおり、その中でも車田正美の「リングにかけろ」には一番魅せられて行きました。 私が漫画家になろうと本気で思ったのは、この頃です。

(注:「リンかけ」は黄金の日本Jr.編の VSフランスの連載中でしたが、フランス選手全員が「ベルサイユのばら」の「オスカル」の劣化コピーのように描かれていて、当時、先進国首脳会議東京開催でフランス大統領も来日しているのに笑える失礼さと思ったので、開催月の6月で確かなのです。)