
ワキガわきが(ワキガ:腋臭症)は、アポクリン汗腺からの分泌物と細菌が一緒になり、特有の臭いを生じる病態です。耳の垢が常に湿っている人は、わきがと思って間違いありません。スソわきがといって陰部から臭いを放つ場合もあります。また多汗症は、エクリン汗腺からの汗(あせ)が多量に出る病態です。手術はワキの皮膚の裏から汗腺を削るのですが、正常な皮膚まで削ってしまえば、汚いワキの皮膚になりますから、汗腺だけを選択的に除去する超音波治療法が出現しました。
| 1.手術室への入室と体位・消毒 |
手術室は大学病院でなくとも清潔さと機能性が求められます。なお、わきが(ワキガ)手術は体に負担がかからず、あまり物々しい重装備は必要はありません。

| 2.超音波機器のセッティング |
超音波は出力、洗浄液の流量、吸引圧などで効果が変わってきますので設定に細心の注意がいるものです。

| 3.デザイン |
ワキにピオクタニンという液でデザインします。デザインの範囲は腋毛の範囲より一回り大きい位です。

| 4.麻酔 |
局所麻酔で行います。大して痛くはありませんから、全身麻酔や硬膜外麻酔は不要です。当院では、リラックスできる短時間作用の内服薬を事前に服用して頂きますので、比較的気楽に受けられるものです。

| 5.極小切開ハンドピース挿入 |
ワキの皮膚のシワの中でも一番目立たない部分にわずか約7〜8mmの切開を行い、そこからハンドピースを挿入します。

| 6.削り&超音波 |
ハンドピース挿入後、皮下のアポクリン腺の多い部分は、直接削りますが、エクリン腺の多い部分は、削らず、超音波を浴びせて汗腺を選択的に破砕・変性させます。これにより皮膚が美しさを保ち得る皮膚実質組織の多くの部分を残したまま、ワキガ治療が出来ます。

| 7.削られ吸引された組織の吸引 |
このように物理的に削られた組織は吸引されシリコンチューブの中を通って行きます。チューブ内を見ても分かるように出血が少ないのもこの治療の利点です。

| 8.術直後の外観 |
術直後は、赤っぽい感じになります。また切開は僅か7〜8mmのままで済んでいることが分かります。

| 9.包帯による圧迫 |
わきが(ワキガ)手術では、術後の圧迫が大切です。この圧迫が不適切ですと、皮膚の下に血腫が溜まって術後の経過が思わしくないものになってしまいます。しかし、圧迫をことさら強力にしなくても超音波を使用するやり方ならば、術後の出血の可能性自体が少なく安全です。そのため当院では大変辛いタイオーバー固定は不要です。

| 超音波機器 ソノペットUS2001 |
超音波発生装置の本体です。これで超音波の出力設定ならびに洗浄冷却用水の速度調節が行えます。また超音波発生を断続的に行っても、合計時間が経時的に表示されます。スイッチの切り替えは足踏みで行い清潔な操作を行える配慮がされてあります。

ソノペットUS2001
| 超音波ハンドピース(ストレート型) |
これはストレート型ハンドピースで一般的によく使います。先端の金属部は比較的鋭的であり、これが軸方向に前後運動する時、組織の削りが行えます。そして削りつつも超音波が発生し、2つの作用が同時進行するのです。

超音波ハンドピース(ストレート型)
| 超音波ハンドピース(アングル型) |
これは部位によっては手術し易いように角度をつけたハンドピースで、出力や仕様はストレート型と同様です。なお、握りの太い方に振動子が備わっており、先端の金属部が直接治療部の組織に接しつつ、この先端から持続的に洗浄冷却水が噴射されると伴に吸引が行われます。

超音波ハンドピース(アングル型)
| *わきが概論 |
ワキには特有の臭いの元となるアポクリン腺と、単なる汗を出すエクリン腺という二種類の腺があります。アポクリン腺自体は、ワキの下、乳輪、陰部、など存在は限局し、その汗の中に脂肪・脂肪酸・アンモニア・鉄分・蛍光物質など、臭いの元となる物質が分泌されています。エクリン腺は全身に存在し、その汗の成分は大まかには99%の水分と残り1%は塩分になります。アポクリン腺の汗の性状は粘り気のある乳白色の液体で、この成分が細菌などによって分解されると臭いが発生しますが、この臭いが俗に言う「ワキガ臭」なのです。多汗症の場合、アポクリン腺も含め、とにかく汗の分泌が多い症状なのですが、主にエクリン腺分泌の汗からの発症と考えた方が良いようです。これはワキの下だけではなく顔や手足も同様です。ただワキは身体と腕が閉じた状態が多くため汗をかき易いところであり、ワキの下がジトッと濡れる、汗が流れる、服に汗染みが出来るということになるのです。
| *わきが多汗症の自己診断 |
1、家族にワキガの人がいる。(アポクリン腺の数や大きさは、遺伝性があります。両親のどちらかがワキガ体質だと子供もワキガ体質になる可能性が高いと言われています。
2、人より毛深い。(アポクリン腺と皮脂腺の分泌液は毛穴を通って皮膚の表面に出るため、ワキなどの毛が多い人はこれらの腺の数も多いのです。)
3、ワキ下に黄色い汗染みができる。(アポクリン腺からの分泌液には脂肪・鉄分・色素などか含まれており、汗染みが出来やすい人はアポクリン腺の数や分泌量が多いので黄色い汗染みの原因となるのです。)
4、耳垢が湿っている。(耳の中にも多くアポクリン腺は分布しています。耳垢が湿っているということは、アポクリン腺の分泌が多いということになります。)
これらの項目の中で思い当たることがある場合、ワキガ多汗症の可能性があると言えるでしょう。当てはまる項目が多ければ多いほど可能性は高いと言えます。
| *一般的わきが多汗症の手術療法と最近のBOTOX治療 |
【切除法】
この方法は腋毛の生えている部分の皮膚を大きく切り取る方法です。古典的で近年はあまり行なわれません。この方法は、あまり広範囲は難しくワキガの原因となるアポクリン腺のある部分を全部切り取ることは困難です。結局中央部だけを切除することになることが多く、切り取った傷の周りに腋毛や汗腺が残るなど治療効果としては不完全となりやすいのが欠点です。また大きく皮膚を切り取り無理して縫い縮めるわけですから、傷痕も大きく皮膚のつっぱり、腕が挙げ難くなる等、後遺症が残ることがあります。切除法の合併症を補うために皮膚をZ型やW型に切り縫合する方法もアレンジされていますが、いずれにしても腋毛の生えている部分の皮膚をすべて切り取ることは困難で、症状だけ考えても不十分な効果しか得られないようです。
【反転剪除法】
剪除法は、皮膚を裏から削り込んで、汗腺を取り除くことにより臭いや多汗の症状を治そうという治療です。これはワキの下の脱毛効果もあります。手術はワキの下のシワに沿って切開します。アポクリン腺・皮脂腺・エクリン腺を徹底的に直視下に、指で皮膚を裏返しつつハサミで少しずつ切除していく方法です。徹底して行えばアポクリン腺、エクリン腺がほとんど取れるだけでなく、腋毛の再生もしてきません。しかし皮膚を均一の厚さで削り取るのは難しいので、皮膚の裏側が凹凸になると厚みのある部分に汗腺が残ってしまうことや、削りがギリギリを過ぎると皮膚に穴が開いてしまったり、皮膚が壊死してしまうこともあります。逆に削りが不十分だとワキガの臭いや汗がキチンと取れず不確実になりやすいため熟練した技術が必要になるものです。この方法は手術時間は最低2時間は掛けて、腋毛の生えている周囲の部分までしっかり行うことがポイントと言えます。ただこの方法は皮膚が美しさを保つ上での真皮をほとんど削いでしまうために傷の長さだけでなく見た目の質感も悪くなってしまいます。
【吸引法】
もともとは脂肪吸引からヒントを得て吸引器にストローのような金属の棒(カニューレ)を取り付け、この器械を使い、ワキの下のアポクリン汗腺を取り除こうとして開発された方法です。しかしワキガのアポクリン腺は真皮とよばれる硬い皮膚の中にありますのでこの器械では完全に取ることは出来ないため、再発が多く腋毛も残ってしまいます。皮膚の切開も数mmと小さく手術後の回復が早いのが特徴ですが、最近は評判が良くありません。
【皮下組織削除法】
ローラーとカミソリの刃のようなものがついた器具で皮膚を裏から薄く削る方法です。2cm程の切開で皮膚を紙のようにペラペラに極薄に削ることも出来るため、アポクリン腺だけではなくエクリン腺もほぼ完全に取ることが可能で、術後の外観はともかく、汗腺を取ることだけには非常に良い手術方法です。しかし術後の厳密な自己管理が必要となり、管理不足だとワキの皮膚が壊死してしまうこともあります。皮膚を極薄に削るため熟練した技術も必要となります。技術がなくこの方法を用いた場合、効果が悪かったり皮膚に刃による縦の裂き傷が付いてしまうこともあります。技術が良く、完璧に行えた場合でも、この方法は皮膚が美しさを保つ上での真皮の実質組織をほとんど削いでしまうために見た目の質感が老人の皮膚のように悪くなってしまいますし、ダブルタイオーバー固定という強力な締め付けで太い糸の痕が多数残ってしまいがちなのは欠点です。外観を全く気にされず汗腺は徹底的に取って欲しい人向きでしょう。
【ボトックスによる多汗症の治療】
ワキガ・多汗症であっても手術は避けたいと考える人には、ボトックス注射による治療法が近年は行われています。ボトックスは交感神経線維をブロックすることにより汗腺への発汗指令を止める働きをしますので、汗腺そのものが減るわけではありません。この神経ブロックの効果が薄れると徐々に以前と同様に汗が出てきます。効果は個人差もありますが、投薬の量が多いほど長続きすることは医学文献上も確認されています。一般的には効果は、約4〜8ヶ月位なので定期的に注射を行うことが必要です。
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