形成外科等(脂肪層)手術後に エコノミークラス症候群で死亡すれば医師に損害賠償を課せる例

(30歳女性 156.5cm 64kg 太腿内外の局麻の脂肪吸引 膨化水溶液を含んだ吸引量で900cc。)
3週間後に急死:肺動脈血栓塞栓症 ↓ 

肺塞栓 肺動脈血栓塞栓

太腿中央部の脂肪層内の表在静脈内に微量の血栓付着部を見つけた ↓ (一部器質化)

肺塞栓 肺動脈血栓塞栓

杏林大学法医学の佐藤喜宣教授は「(下肢深部静脈である)大腿静脈と下腿静脈に特記することはない。」と回答した上で、証人尋問では大伏在静脈は深部静脈と何度も述べ、上記の「微量の血栓」を起源とした「右下肢深部静脈血栓症」と論じ、「脂肪吸引を一番の原因と考えている」と証言した。

 

昭和大学形成外科の原口和久助教授は鑑定人として太腿脂肪吸引が深部静脈血栓症を生じたと剖検所見に全く触れずに鑑定。出向依頼で患者と初めて手術日に初めて会った医師にも術前採血や胸部レントゲンの検査をしなかった過失や数日入院させなかった過失を指摘。また脂肪吸引の20日後にこの患者が階段から落ちて捻挫し診て欲しいと予約なしで来た際に、受付は美容クリニックと診療科違いなのでレントゲンのある他科転医を促し、その時に医師は予約患者の手術中で来院を伝えられなかったが、原口鑑定人は「まず診察すべきだった。」と鑑定した。

 

判決では佐藤教授の証言を全面的に認め、「遺体を見分し,多数の解剖例を有する法医学者である証人佐藤は,大伏在静脈における血栓の発生と肺動脈における血栓の閉塞を確認し,その両者の関係を矛盾なく説明しているので,その見解を不合理なものとする根拠に乏しく,両者の因果関係の存在を否定することはできない。」と判断した。 その上で、捻挫で来たが急死前日(土曜午後)に来院した患者には(予約患者の手術を放置をしても)、「診察を行わなかったことにより■■■の救命のための適切な医療を受ける機会を奪い,これによって■■■に対して精神的な苦痛を与えたということができるから,これについて賠償すべき責任を負うというべきである。」と賠償金550万円と支払い済みまでの年5分の割合の遅延損害金を課した。

 

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最高裁判所の検索サイトで脂肪吸引

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検索 脂肪吸引の判例

右に5つPDFがあるが脂肪吸引メインでの裁判例の結果は一番下の本事件だけである。これは、脂肪吸引後に肺塞栓で死亡した患者の遺族にとっては有力な判例となる。なぜなら脂肪層の表在静脈には微小な血栓は探せば必ず見つからである。

――――――――――(論評)――――――――――

この法医学の教授が虚偽を述べているのは明白である。 静脈炎が先行の血栓は「血栓性静脈炎」であり、静的な血液鬱滞で生じる「(深部)静脈血栓」とは血栓の出来た方が異なる。 静脈炎が先行の場合、炎症性に血栓は固着する。特に大伏在静脈のような表在静脈においては筋肉より外のため血栓が筋肉の屈伸運動で飛ぶことも無く、もしこの事件のように右太腿中央部に血栓が生じ始めても血栓は静脈壁に固着しながら中枢(心臓方向)だけでなく末梢方向にも程々は延びる。だから静脈炎の進行を論じる場合、本件の「微小な血栓」が「起源」との表現は不適切である。

  もし血栓性静脈炎が大伏在静脈内に生じ肺塞栓を誘発となれば、必ず連続した血栓が、大伏在静脈が伏在裂孔に入り合流部の大腿静脈まで固着した状態で顔を出しているはずである。上記の肺に映っている写真の番号[1282]は52mmほどあるので、もし死因の原因が大伏在静脈内からなら固着した血栓は「微小な血栓」と表している部位から15~17cmくらいの長さで見つかるだろう。しかしそれが無いこの事件では、「微小な血栓」とは単なる孤立性血栓に過ぎない。 法医学の教授は「大伏在静脈」を「深部静脈」と医学的誤りを何度も供述し、炎症性の「血栓性静脈炎」と血液鬱滞の「静脈血栓」を混ぜこぜにして煙に巻く医学説法をしたに過ぎない。長年テレビに毎週レギュラー出演しては視聴者を驚かし視聴率を上げて来たそうだが法廷の証言も同様であった。

  形成外科助教授は血管外科には全く無知であり、鑑定書に付された書証が鑑定の裏付けに全くなっておらず、裁判官が鑑定書添付の医学論文を読まない読めないのを知ってのことかもしれないが、鑑定と反対の考察のものまで提出されている。また被告医師らの傍聴もして予約手術中であったのを知っている中で予約手術中だったのに捻挫を「まず診察すべきであった。」との鑑定は臨床医にあるまじきことである。

 

しかし、最高裁の判例検索にまで載った日本で一番有名な脂肪吸引裁判の判例になっている以上、これは手術と無関係にエコノミークラス症候群で亡くなっても脂肪吸引が理由とできる屈指の判例として善良な医療者にとって大きなの災いであろう。