日本美容外科学会(JSAPS)選出の医師の鑑定書に沿って 判決が下された一例

事案:30歳女性、 156.5cm 64.0kg 大腿内外側の脂肪吸引→ 3W後急死→提訴

1 非常勤の被告医師が医院の要請で来院し局所麻酔単独の脂肪吸引(Tumescent液を含む脂肪900ccを吸引)。患者は術後、独歩で帰宅。

2 患者は術後15日後に持病の椎間板ヘルニアによる左下痛にて整形外科受診し、医師から下肢伸展挙上テスト(SLR)や足背・足の背屈筋力テスト(MMT)および知覚神経の診察を受けたが、医師には深部静脈血栓肺塞栓・肺塞栓を疑わせる所見は得られなかった

3 術後医20日(死の前日)に捻挫診察希望で予約無しに独歩来院。上記被告医師が1人で手術中だったため、事務長が捻挫には整形外科か外科の医療機関の受診を促がす。

4 翌日自宅で急死。剖検にて深部静脈血栓肺塞栓・肺塞栓が死因と分かった。

5 手術ミスとして遺族が9124万円余で提訴。

6 裁判では被告医師は過失も因果関係もなく、死の前日の来院は夜中まで手術が続き全く聞いておらず後日聞いた際は「自殺かも」と聞かされたと主張。

7 裁判で出頭を命じられた元受付は死の前日の来院は(先生に)伝えたと思います。」と証言したが、「それには先生は何と言いましたか?」との尋問には「覚えていません」と返答。

8 被告医師は来院・診察希望を聞いていたら手術中の患者から離れられないまでも手術室入口で視診はしただろうが、深部静脈血栓肺塞栓・肺塞栓が除外診断である以上、診断は無理と証言。

9 証人尋問後に面談できた元事務長は「捻挫を診て欲しいとアポ無しで来たが、先生は手術中であの日は全部手術で夜中まで予約が詰まっていたし、レントゲンもない中、捻挫は美容クリニックより整形外科か外科で診てもらうように。」と入口の受付でそのまま転医を促がし帰したと述懐。

10 尋問後に被告医師側は元受付の証言は伝えていないと証言すれば責任が生じるから嘘を証言したものと主張。だから曖昧に「思います。」や返答に詰まり「覚えてません。」となったとも主張。

11 鑑定医は被告医師や受付の証人尋問を裁判官と同じ高台で傍聴し、後日、鑑定書を提出。

12 鑑定書では、治療部位が表在層にとどまるとは言え、表在静脈が原因となって深部静脈血栓・肺塞栓を起こすことは美容外科医・形成外科医として考えておくべきであると記載し、本事件では病理的な裏付けは全くせずに被告医師の手術と骨盤内深部静脈血栓の発生に因果関係はありと鑑定した。また手術後は数日入院が望ましいと鑑定し、死の前日の捻挫の診察希望で独歩来院時は(その時の手術患者を放置しても)診察を行うべきだったとし、且つ血栓塞栓症の発症を考え下肢の診察をした上で高次の病院へ救急搬送させるべきだったと鑑定した。

13 判決文は入院に関し被告医師からの膨大な書証による反論から過失の認容はしなかったが、因果関係は鑑定書に沿って認め、また執刀医が下肢の診察を行わなかったことも鑑定書に沿って過失として認め、これに550万円+遅延損害金の損害賠償を認める判決を下した。

鑑定書の1頁(クリックで表示) 2頁以降