美容外科クリニックのチェーン展開は広告の効率UPのため

 10年以上前は今と異なり紙媒体広告が主流で、流行っている美容外科は皆、マガジンハウス社の「anan」に広告を出していました。
大塚美容形成外科、コムロ美容外科、品川美容外科、共立美容外科などの大手は毎週2頁見開きで、日本最大(いや世界最大でもあった)神奈川クリニックは6頁広告など出していました。
なぜ「anan」なのか?それは全国誌だから地方誌やタウン誌より読者に説得力があったのです。言い方を変えれば、反響がある。患者来院率が高い。冷徹な言い方なら宣伝の費用対効果が高い媒体だったからです。「ViVi」も同様でした。 
この時、広告を出している美容外科クリニックが東京に1つあるだけでしたら、関東以外の人はananを見てもなかなか通えません。それでそういう患者さんを「拾う」ために全国展開が盛んになったのでした。
ただ私は美容医療協会の見かたのようにこれを悪いとは言いません。宣伝すれば患者さんが多く来る。多くくれば適応のない患者さんを断ってもやって行ける。しかし広告もロクにしない、患者さんが余り来ない、やっと来た本当は手術する必要のない患者さんの手術をやってしまう。これでは悪徳です。
さて、ananの広告費は1週間の2頁見開きの掲載が常連が225万円、単発で260万円位でした。つまりananの2頁見開きだけで1カ月1000万円近い宣伝費が必要で個人クリニックではとても無理です。しかし全国に15軒展開すれば単純計算で1軒は月に64万円位の支払いで済みます。
だから私は勤務医の時、「大手は益々栄え、個人院は益々細る。」と他のドクターに説くことしばしばでしたが、実はそういう美容外科の在り方は、個人の資質など問われない私の好まないものでした。その未来を想う時、辛かったです。