凍結脂肪の(解凍後)注入
ヤスミクリニックでは9年余り前から脂肪吸引した脂肪を凍結保存し、患者さんの希望する時期が来た時に解凍して脂肪注入を行っています。
この件は5年以上前は批判も多くありました。悪く言う医師は「定着率が低すぎる。」のを主に強調していたものです。ですが、今は東京都が凍結卵子の保存に助成金を出すこと等もあって凍結への理解が進み、最近は強い批判はなくなったように受け取っています。
私が凍結脂肪の(解凍後)注入のことを初めて聞いたのは、平成10年(1998年)、日本美容外科学会(十仁学会=JSAS)で脂肪吸引の開祖であるフランスのピエール・フルニエ先生が1時間ほど講演されてのことでした。
講演後に座長が「フロアーの先生方から何かご質問はありますか?」と言われたので、恐れ多くも私は挙手してフルニエ先生に「凍結した脂肪を解凍後に注入とは、凍結で脂肪が壊死したにせよ、脂肪の実質成分がボリュームとして何がしか残せるというものですか?」と尋ねれば、「ノン、ノン、脂肪は生きているのです。」とサラッと答えられた時、感銘を受けてしまいました。SF的ですが人体凍結保存の可否が問われている中で、『単細胞なら可能か。』と思ったものです。
その後に岐阜の市田先生が凍結脂肪の(解凍後)注入をされていると聞き、学会の時に詳しく教えて頂き、私も専用の機材を購入して脂肪を凍結するようにしました。
今の印象として『丁度、凍結卵子の解凍と同じくらい、十分使える。』と受け取っています。患者さんの評判も上々です。
ですが学会で発表するのは躊躇しますね。
嘗て高須克弥先生が日本美容外科学会で昭和54年に「フランスやイタリアでは脂肪吸引術というのが行われている。」と初めてご報告された時に、猛批判を浴びたそうですから(安見正志先生の談)。