肩幅を鎖骨骨切りで女性的に変える
「肩幅が広くて男っぽくて嫌。もっと華奢な『なで肩』にしたい。」この希望の人は、生物学的には男性だけど心は女性という性別不合(GI)の人に多く、私はそれを叶える手術を平成15年から行っています。
以前は鎖骨の骨幹部を25~28mmほど切除して金属で留めていました。しかし問題点は、①大きな傷、②なで肩になっていない、③両肩関節が前に来た不自然な胸郭になる。が挙げられました。それでも「男性の肩幅に見えなくなったから、やって良かった。」とは言って頂けていたのですが、やはり①~③を私は気にしていました。
①は金属を入れる以上、目立つ傷が出来るのは避けられません。
②は、フリー素材を掲げますが、男性は鎖骨が女性より長いだけでなく外側がやや上向きで、怒り肩です。これを短くしても幅狭の怒り肩であって「なで肩」とはなりません。
③鎖骨は前にある骨なのでこれを短縮すれば上胸郭の前方ばかり狭くなってしまいます。
それで今、行っているのは金属を使わない骨切り術です。これで①傷は9㎜ほどになり且つ肌のキメに沿っていたから後々殆ど目立たない。②なで肩にできる(骨切りが上手く行った場合)。③不自然というほど肩関節が前には来ない。が総じて実現できています。
この治療で患者さんの手間が掛かるのは暫く上腕を体幹とバンド固定すること、両方同日にはできないことです。
やっている私からすれば手術は全くブラインドで骨を切るというのが難しいと言えば事実です。帝京大整形外科の教授でしたイリザロフ法で有名な松下隆先生が提唱されているチッピングテクニックも駆使しますから時間も少々掛かります。
20年余り前は肩幅狭小化手術をやっていたのは私と米国医師くらいのようでしたが、今は世界のあちこち行われ始められています。その画像も見たことはありますが、プレートなど金属固定でした。
でも今後は特に20代までの骨癒合力が良い年代層なら金属を使わずに済む私が行っているような手術が主流になるはずです。担当医は上記①~③の問題に敢えて金属を使わない方が良いと気づくはずですから。