美容外科の静脈麻酔:デュプリバン(プロポフォール)

近年、美容外科で静脈麻酔がかなり盛んですが、本来は短時間手術には不要です。
ただ非常に恐がりな人や長時間手術では使った方が良いです。
一般的には下記のデュプリバン(学術名:プロポフォール)が使われます。

これは、眠りが心地良いのと、点滴から流すのを止めて10分もすれば完全に意識清明となるので、日帰り手術で使い易いです。
ただ下記の欠点もあります。
(1)あまり深く眠らせると呼吸が止まる(下根沈下で気道が閉塞)こと。そこまで深くしない程度でその患者さんに合わせた濃度で調整する必要があります。
(2)眠るだけで痛みを取る作用がないこと。それで呼吸が止まるに近いくらいの濃い濃度にして顔に一気に麻酔を打ち、打ち終わったら濃度を薄くするという手法を取る医師は多いです。

私は上記(2)で行うこともありますが、それとは別に眠って且つ鎮痛効果もある麻酔方法のNLA変法も用います。ただNLA変法は薬剤を流すのを止めても意識清明に戻るのに時間が掛かるのが難点です。ですから長い手術では静脈麻酔の掛け始めはNLA変法を用い顔に麻酔を打つ際に痛みを感じさせないようにして、この局所麻酔を打ち終わったらデュプリバンに変えることも行います。

NLA変法は私が昭和63年から週1日で美容外科の非常勤勤務を始めた時に、そこの院長が時々掛けていた静脈麻酔でした(当時はデュプリバンが未開発)。平成2年の1月からは麻酔科出向で15ヶ月間、常勤麻酔科医として働きましたが(美容外科クリニックへ週1日は継続)、この時も上司の指導の元でNLA変法を時々用いました。

なお私が大学の麻酔科勤務の際は助教授がよく「麻酔とは死と隣り合わせ、慎重にやるもんだ。」と出向して来た私たちに言っていましたが、出向から又、大学の整形外科の医局に戻ると縦割り制のため静脈麻酔や全身麻酔を掛ける機会がなくなってしまうので、悩んだ上で、麻酔科出向の後で大学の医局を辞めて縦割りの余りない湘南鎌倉総合病院に就職したのでした。
ここに就職の医師は何科であろうと日本救急医学会に半ば強制加入で、救急医学会の専門医を取らせるのでした。だから今の私も日本救急医学会専門医で有り続けています。湘南鎌倉総合病院では昼は整形外科医として働きましたが、まだ独身だったので家に帰らず、他の医師と一緒に病院の最上階で寝泊まりしており、夜の緊急手術(だいたい消化器外科か産科、たまには整形外科)では麻酔科医として麻酔をかけ続けていました。それで麻酔科標榜医も取得できました。

私たちの世代の医師のありがちなことですが、医師免許取得してから、食事と睡眠と入浴以外は、殆どの時間、医療に従事するばかりでした。だから今があるのだという自負はあります。

(下記は余談です。字が小さい時は文字画像をクリックして下さい。)