顎のシリコンプロテーゼは骨膜下では骨吸収で沈下

表題の件は私が20年前からHPなどで書き続けてきたことで、鼻のシリコンプロテーゼは骨膜下に入れる方が良いし骨吸収もおきませんが、下顎骨は発生学的に上顎骨と異なるのでシリコンが直接骨に接着した部分はカルシウムが抜けてプロテーゼが骨の中に沈んで行きます。だからそのような人のレントゲンを撮ると骨が(脱灰して)黒っぽく映りますし、シリコン自体が沈み込んでいるのが画像上でも分かります。患者さん自身が「数年前の手術後の方が顎が出てていたように思います。なぜか少し引っ込んだような??」などと言われるものです。

そのような人の再手術で口の中から切開して覗いてみれば明らかにシリコンが下顎骨の中にめり込んでいるのが分かります。治す際は、今まで入っていたシリコンの上に骨膜や繊維化した被膜が存在するので、その上を慎重に剥がして行き、そこに新たなシリコンプロテーゼを置いて骨と直接触れないようにします。

実はこの1年振り返ると、私の上述の説明を読んで来院され、相談・手術となった人が複数いますが、相談だけで「手術はせずに、その架橋の強いヒアルロン酸注入を後2,3回続けて下さい。」と説明した人もいます。

このような「手術までは不要」という人は、『もう少しだけ顎が出ればEラインが整うのに・・・。』という元々が割と状態の良い人です。ご存じのように近年のヒアルロン酸の架橋の強いもの(電子顕微鏡で見ると繊維が絡みつくように製造)は毎回少しづつ残存して行くのです。ですから計3回か4回やれば、そこそこ良い形が終生得られます。
「整形は注射が主流の時代になった。」等と注射ばっかり行っている美容医師もいますが、私は外科医であっても注射で済みそうな人には手術は薦めません。
⇒この1年の報道への雑感