手術手技を見学する上で役立った麻酔科出向

 江崎先生は私に整形外科への入局を勧めるも、傷の治り方など形成外科医のような目で見ておくことも言われていましたから、その勉強を独学とチラ見&口頭指導だけでなく、何らかの形で十分見ておきたかったのです。それで整形外科入局2年後に麻酔科出向願いをしました。それは形成外科では全身麻酔の導入と覚醒以外の麻酔管理は安定しており、この時は、顔面・胸の手術は至近距離で見放題なのが分かっていましたので、ちょうど大工さんの下っ端職人は親方から手取り足とり指導受けず目で見て技術を盗み得ると聞きますが、それと同じ状況を造ろうと思ったのです。
 麻酔科勤務中に形成外科(だけでもないですが)の手術を良く見てメモする。そして夜の当直・または週1の外勤日の整形外科で外傷の患者さんが来たら麻酔中に見た事、聞いた事を実践する。例えば風呂場で転んでガラスで切った。切った部位ごとに皮膚の緊張度を考えて盛り上げ縫合をどこまでやるか、欠損があるならどの程度まで剥離&縫縮して大丈夫か?dressingの仕方等々。患者さんと看護婦さん(当時は看護師と言わない)には、1週間後に私の来院時間帯に来てもらうように頼んでおく。そして1週間後にチェック。久留米大整形外科は関連病院も多く、麻酔科在職中は夜の当直に週2~5回は行けました(行かないと麻酔科が無給ですから生活ができない)ので、実践の機会は多かったです。また全身麻酔を掛けさせてもらった形成外科の患者さんは形成病棟の日曜の包交時間に見学させてもらって、皮弁や植皮などの経過を知り得ることが出来ました。こんな感じで麻酔科出向は副次的にも得る事が多く、出向延期もお願いして結局久留米大学麻酔科には1年3カ月居続けました。
 そして1年も過ぎれば麻酔科医としての自覚も生じる訳で、再び久留米大整形外科に戻り自分が全身麻酔を掛ける機会が無くなってしまうのは非常に辛いものでした。だから整形外科と麻酔科(救急も)の兼任できる徳洲会・湘南鎌倉総合病院へ移ったのです。